共有名義の不動産を売却する際、「兄弟が反対して売却が進まない」「夫婦間でもめてしまった」といったトラブルは少なくありません。複数の人が所有権を持つ共有名義不動産は、通常の売却とは異なる複雑な手続きが必要です。
しかし、正しい知識と適切な手順を踏めば、共有者全員が納得できる売却を実現できます。今回は、共有名義不動産の売却方法から、兄弟間・夫婦間でのトラブルを避けるポイントまで、わかりやすく解説します。
1. 共有名義不動産の売却が難しい理由

共有名義不動産の売却には、単独名義とは異なる特有の課題があります。なぜ売却が難しいのか、その理由を詳しく見ていきましょう。
①全員の同意が必要
共有名義不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。たとえ過半数が賛成していても、一人でも反対する人がいれば売却できません。これは民法で定められたルールで、権利関係が複雑な物件ほど合意形成が困難になります。
兄弟間では「思い出の実家だから売りたくない」、夫婦間では「離婚時の財産分与で揉めている」など、感情的な要因も絡みやすく、話し合いが長期化するケースも少なくありません。
②持分割合による売却価格の分配
共有名義不動産では、それぞれの持分割合に応じて売却代金を分配する必要があります。しかし、相続などで持分が複雑に分かれている場合、「誰がどの程度の権利を持っているか」を正確に把握するだけでも大変です。
また、共有者の中に借金がある人がいると、その人の持分に差し押さえがかかる可能性もあり、売却手続きがさらに複雑になります。
③権利関係の確認に時間がかかる
権利関係が複雑な物件では、登記簿謄本の確認から始まり、相続関係の調査、共有者の現住所確認など、多くの準備作業が必要です。特に相続で取得した不動産の場合、相続登記が未了のケースも多く、売却前に相続登記を完了させる必要があります。
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2. 共有名義不動産の売却方法は3パターン

共有名義不動産を売却する方法は、大きく分けて3つあります。それぞれのメリット・デメリットを理解して、最適な方法を選びましょう。
①全員同意での一括売却
最も一般的で理想的な売却方法です。共有者全員が売却に同意し、不動産を丸ごと売却して、持分割合に応じて代金を分配します。
メリット:
- 最も高い売却価格が期待できる
- 手続きが比較的シンプル
- 共有関係が完全に解消される
デメリット:
- 全員の同意が必要
- 一人でも反対すれば売却できない
- 合意形成に時間がかかる場合がある
この方法で売却するには、まず共有者全員で話し合いの場を設け、売却理由や売却価格、費用負担などについて十分に協議することが重要です。
②共有持分のみの売却
自分の持分だけを第三者に売却する方法です。他の共有者の同意は不要ですが、売却価格は市場価格の7割程度になることが一般的です。
メリット:
- 他の共有者の同意が不要
- 自分の判断だけで売却できる
- 早期に現金化が可能
デメリット:
- 売却価格が大幅に下がる
- 購入者が限られる
- 他の共有者との関係悪化の恐れ
共有持分の売却は、「どうしても現金が必要」「他の共有者と連絡が取れない」といった場合の最終手段として考えましょう。
③共有物分割請求による売却
共有者間で話し合いがまとまらない場合、裁判所に共有物分割請求を申し立てる方法もあります。裁判所が代金分割(競売)を命じることで、強制的に売却できます。
メリット:
- 他の共有者が反対でも売却可能
- 法的な強制力がある
- 確実に共有関係を解消できる
デメリット:
- 時間と費用がかかる
- 競売価格は市場価格より安い
- 共有者間の関係が悪化する
この方法は、どうしても合意が得られない場合の最終手段です。まずは話し合いによる解決を目指しましょう。
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3. 兄弟間トラブルを避ける売却のコツ

兄弟間での共有不動産売却では、感情的な対立が起こりやすいものです。円滑に売却を進めるためのポイントをご紹介します。
①事前の情報共有が重要
売却を検討している理由や背景を、すべての兄弟に正直に伝えることから始めましょう。「親の介護費用が必要」「維持費の負担が重い」など、具体的な理由を説明することで理解を得やすくなります。
また、不動産の現在価値や維持にかかる費用、税金などの情報も共有し、全員が同じ認識を持てるようにすることが大切です。
②中立的な第三者を交える
兄弟同士だけの話し合いでは感情的になりがちです。不動産会社や弁護士など、中立的な専門家に相談することで、客観的な視点から最適な解決策を見つけられます。
特に、相続で取得した実家などは思い出が詰まっているため、感情的な要因が大きく影響します。専門家のアドバイスを受けながら、冷静に判断することが重要です。
③持分の買取も検討する
どうしても売却に反対する兄弟がいる場合、その人の持分を他の兄弟が買い取るという方法もあります。これにより、共有関係を解消しつつ、反対する人の意向も尊重できます。
買取価格は市場価格を基準に、公平に決めることが大切です。不動産鑑定士による査定を受けるなど、透明性の高い価格設定を心がけましょう。
④段階的な合意形成
いきなり売却の可否を決めるのではなく、段階的に合意を形成していくことも効果的です。
1. まずは現状の把握(不動産価値、維持費用など)
2. 各人の希望や事情の確認
3. 複数の選択肢の検討
4. 最終的な売却方法の決定
このように段階を踏むことで、全員が納得できる解決策を見つけやすくなります。
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4. 夫婦間での共有名義売却の注意点

夫婦間の共有名義不動産売却では、特に離婚が関わる場合に複雑な問題が生じることがあります。
①離婚時の財産分与との関係
離婚に伴う共有不動産の売却では、財産分与の一環として処理されることが一般的です。この場合、単純な持分割合ではなく、夫婦それぞれの貢献度や経済状況なども考慮されます。
住宅ローンが残っている場合は、その処理方法についても事前に決めておく必要があります。売却代金でローンを完済できない場合の任意売却についても検討が必要です。
②住宅ローンの連帯債務・連帯保証
夫婦で住宅ローンを組んでいる場合、連帯債務者や連帯保証人の関係を整理する必要があります。売却後もローンが残る場合、どちらが責任を負うのかを明確にしておかないと、後々トラブルの原因となります。
金融機関との交渉が必要になることもあるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。
③税務上の注意点
夫婦間での不動産売却では、贈与税や譲渡所得税に注意が必要です。特に、一方が相手の持分を買い取る場合、適正価格でないと贈与とみなされる可能性があります。
また、居住用財産の3,000万円特別控除などの税制優遇措置についても、適用要件を満たしているか確認しましょう。
④売却時期の調整
離婚協議中の場合、売却のタイミングが重要になります。協議離婚が成立する前に売却するか、離婚成立後に売却するかで、税務上の取り扱いが変わることがあります。
また、子どもの進学や転校の時期なども考慮して、最適な売却時期を決めることが大切です。
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5. 共有名義不動産売却の手続きと必要書類

共有名義不動産の売却手続きは複雑ですが、事前に必要書類を準備し、手順を理解しておけばスムーズに進められます。
①事前準備で必要な書類
権利関係の確認書類:
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 固定資産税評価証明書
- 測量図・境界確認書
- 建築確認済証・検査済証
共有者関連の書類:
- 共有者全員の印鑑証明書
- 共有者全員の住民票
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 実印
相続関連書類(相続で取得した場合):
- 戸籍謄本一式
- 遺産分割協議書
- 相続関係説明図
これらの書類は、有効期限があるものもあるため、売却のタイミングに合わせて取得することが重要です。
②売却手続きの流れ
Step1:共有者間での合意形成
まずは共有者全員で売却について話し合い、売却方法や条件について合意を得ます。この段階で、売却理由や希望価格、費用負担などを明確にしておきましょう。
Step2:不動産会社の選定と査定
複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な売却価格を把握します。共有名義不動産の取扱い実績が豊富な会社を選ぶことが重要です。
Step3:媒介契約の締結
共有者全員が売主となって、不動産会社と媒介契約を締結します。この際、共有者全員の署名・押印が必要になります。
Step4:売却活動と価格交渉
不動産会社による売却活動が始まります。内覧の際は、可能な限り共有者が立ち会うか、代表者を決めておくとスムーズです。
Step5:売買契約の締結
買主が決まったら、売買契約を締結します。契約書への署名・押印は、共有者全員が行う必要があります。
Step6:決済と引渡し
残代金の受領と同時に、所有権移転登記を行い、物件を引き渡します。売却代金は、持分割合に応じて各共有者に分配されます。
③よくあるトラブルと対策
Q: 共有者の一人が行方不明になった場合はどうすればいいですか?
A: まずは戸籍の附票や住民票の除票などで現住所を調査します。それでも連絡が取れない場合は、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることができます。ただし、手続きに時間と費用がかかるため、早めに専門家にご相談ください。
Q: 共有者の中に認知症の人がいる場合の売却方法は?
A: 認知症により判断能力が不十分な場合、成年後見人の選任が必要です。家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人が代理で売却手続きを行います。売却には家庭裁判所の許可も必要になるため、司法書士や弁護士にご相談することをおすすめします。
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6. 売却にかかる費用と税金について

共有名義不動産の売却では、通常の売却と同様に各種費用や税金が発生します。事前に把握しておくことで、手残り額を正確に計算できます。
①売却にかかる主な費用
仲介手数料:
売却価格の3%+6万円(+消費税)が上限です。共有者それぞれが負担するのではなく、売却代金から一括で支払い、残額を分配することが一般的です。
登記費用:
- 抵当権抹消登記:1,000円/件
- 住所変更登記:1,000円/件
- 司法書士報酬:3〜5万円程度
その他の費用:
- 印紙税:売買契約書に貼付(売却価格により異なる)
- 測量費用:30〜50万円程度(境界確定が必要な場合)
- 解体費用:100〜300万円程度(古家がある場合)
これらの費用は、原則として持分割合に応じて負担します。
②譲渡所得税の計算方法
共有名義不動産の売却で利益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。計算方法は以下の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
税率:
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下):約39%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超):約20%
各共有者の所有期間は個別に判定されるため、同じ不動産でも共有者によって税率が異なる場合があります。
③特例の適用について
居住用財産の3,000万円特別控除:
自宅として使用していた共有名義不動産の場合、各共有者が最大3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。
軽減税率の特例:
所有期間が10年を超える居住用財産の場合、6,000万円以下の部分について軽減税率が適用されます。
買換え特例:
新たに居住用財産を購入する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得税の繰延べが可能です。
これらの特例は、適用要件が複雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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7. まとめ
共有名義不動産の売却は、権利関係が複雑で手続きも煩雑になりがちですが、適切な準備と段階的なアプローチで円滑に進めることができます。
重要なポイント:
- 共有者全員での十分な話し合いと合意形成
- 専門家を交えた客観的な判断
- 各種特例の活用による税負担の軽減
- トラブル回避のための事前準備
兄弟間や夫婦間でのトラブルを避けるためには、感情的にならず、事実に基づいた冷静な判断が必要です。また、売却方法や時期、費用負担について事前に十分協議しておくことで、後々のトラブルを防げます。
共有名義不動産の売却は複雑ですが、専門知識を持った不動産会社や法律の専門家と連携することで、全員が納得できる解決策を見つけることができます。一人で悩まず、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。
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