教育や介護、家族の入院……まとまったお金が必要になる場面は突然やってくるものです。日々の蓄えだけではどうにもならないこともあるかもしれません。
いざというときのために、日頃からさまざまな資金調達方法について学んでおくことが大切です。
今回は、不動産を担保にすることでお金を借りることができる「不動産担保ローン」について解説します。この機会に正しく理解し、不測の事態に備えて選択肢を広げておきましょう。
1. 不動産担保ローンとは?
「不動産担保ローン」とは、不動産を担保にすることでお金を借りることができる金融商品。戸建やマンション、土地はもちろん、駐車場やアパートといった収益物件も担保にすることが可能で、返済中もそれまでと同様に使用することができます。
カードローンをはじめとする無担保ローンでは、「借り手の信用力」が審査対象です。
一方、不動産担保ローンでは「借り手の信用力」と「担保不動産の価値」が総合的に審査され、不動産に抵当権が設定されます。貸倒れの心配がないことから、無担保ローンより貸付条件で優遇されるのが特徴です。
取扱いのある金融機関は、銀行や信託銀行、信用金庫など預金を受け入れて融資をおこなう「銀行系」と、信販会社やクレジットカード会社、消費者金融会社といった融資専門の「ノンバンク系」に大別されます。
一般的に、銀行系は「金利は低いが審査が厳しく時間がかかる」、ノンバンク系は「審査はゆるくスピ―ディーだが金利が高め」といった傾向にあります。メリット・デメリットが正反対ですので、資金使途や不動産状況に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
2. 不動産担保ローンのメリット
不動産担保ローンには「金利」「借入限度額」「返済期間」「使い道」に有利なポイントがあります。それぞれ確認していきましょう。
①有担保で金利を抑えられる
貸倒れの心配がない有担保ローンは、無担保ローンよりも低金利であることがほとんどです。
一般的な無担保ローン金利は約4~15%であるのに対し、不動産担保ローンでは約3%~10%となっています。金利が抑えられると、支払総額も安くなりますね。
②借入限度額が大きい
不動産の価値が加味される不動産担保ローンは、無担保ローンより借入限度額が大きくなります。
無担保ローンでは最大でも1,000万円が上限であるところ、不動産担保ローンでは1億円程度が一般的。不動産次第では10億円前後まで借り入れられることもあります。
ただし、上記はあくまでも「上限」であり、限度額はケースごとに判断されます。不動産評価額の60〜80%ほどが設定されることが多いようです。
③返済期間が長い
不動産は「長期間にわたって価値を維持しやすいもの」。そのため、10年、20年、30年といった長期の返済期間を設定することが可能で、なかには最長35年といった商品もみられます。
返済期間を長くすれば月々の支払額を抑えることができます。
④使い道が自由
不動産担保ローンで借りたお金の使い道は、基本的に自由です。住宅購入だけでなく、教育や医療、余暇など幅広い資金にあてることができます。
ただし、銀行系では事業資金としての利用は認められていないことがほとんど。開業や独立のために使いたい場合にはノンバンク系を検討するとよいでしょう。
同じく不動産を担保にする金融商品に「住宅ローン」がありますが、こちらは使い道が住宅購入に限定されます。
3. 不動産担保ローンのデメリット
不動産担保ローンにはデメリットも存在します。しっかり理解したうえで検討するようにしましょう。
①融資実行まで時間がかかる
不動産担保ローンは、無担保ローンより申し込みから融資実行までに時間を要します。これは、双方の審査の違いによるものです。
借り手の信用力のみを審査する無担保ローンでは即日審査・融資も可能ですが、不動産価値の審査も必要な不動産担保ローンでは、どうしても1週間~1カ月前後の時間がかかってしまいます。
②手数料や諸費用が必要
無担保ローンで借り手が負担するのは「利息」のみで、手数料などの諸費用は発生しません。しかし、不動産担保ローンでは、不動産を担保するにあたって主に以下の費用が発生します。
・不動産鑑定費用
・抵当権の登記費用
・印紙代
・事務手数料
具体的な金額は金融機関によりますが、初期費用として別途20~30万円を見積もっておく必要があります。
③返済不能時は不動産を失う
「不動産を担保にする」ということは、「返済不能時には担保にした不動産を失う」ということ。抵当権を持つ金融機関によって不動産が差し押さえられ、売却代金からローンの返済残額が回収されます。
きちんと返済できれば問題ないのですが、返済できなくなった場合には不動産とその売却額ともに失ってしまう点は忘れてはならないリスクです。
4. 不動産担保ローンの選び方
多種多様な商品のなかから最適なものを見つけるのは大変な作業ですよね。ここでは、不動産担保ローン選びでおさえておきたいコツをご紹介します。
①たくさんの商品を比較する
借り入れ限度額が大きく返済期間が長い不動産担保ローンは、金融商品のなかでも大型でライフプランを左右するもの。銀行やノンバンクといった事業形態にとらわれることなく、広い選択肢のなかから目的に合ったものをピックアップすることが大切です。
②諸費用額も含めて検討する
ローン商品を比べる際は金利に注目しがちですが、不動産担保ローンでは「支払総額(元金+利息+諸費用)」がポイントです。
少額借入の場合、低金利の不動産担保ローンを選んでも、諸費用を含めると支払総額が無担保ローンと変わらないこともあるのです。必ず支払総額を比較するようにしましょう。
③金融機関の経験・ノウハウ
不動産担保ローンは「金融機関の経験やノウハウの差によってローン内容が変わる」といっても過言ではありません。とくにノンバンク系ではさまざまな金融機関が競合していることから、独自色を打ち出した多種多様な商品がみられます。
ネットの口コミなどもチェックし、実際に融資を受けた人の生の声も参考にしたいところですね。
5. 不動産担保ローン活用方法
有担保ならでのメリットを持つ不動産担保ローンには、さまざまな活用方法があります。ここでは、特徴を活かした借り入れ資金の使い道をご紹介します。
①借り換え・おまとめ
不動産担保ローンの活用方法としてもっとも需要が高いのが、無担保ローンからの借り換えや複数ローンのおまとめです。低金利で長期間借りられることから月々の負担を減らせるだけでなく、返済の管理も楽になりますよ。
②相続支払い資金の確保
相続時には、支払いに関するさまざまなトラブルが発生しがち。とくに、相続財産の内訳が「現金<不動産」である場合に問題が起こりやすい傾向があります。
相続税や代償分割、遺留分減殺請求などの支払いシーンにおいて、不動産担保ローンはとても効果的です。
6. 不動産担保ローンQ&A
最後に、不動産担保ローンのよくある疑問をご紹介します。しっかりと不安を解消しておきましょう。
①住宅ローンが残っているときは?
住宅ローンの融資実行時、金融機関は不動産に「第一抵当権」を設定しています。しかし、抵当権はひとつの不動産に複数つけることができるため、不動産担保ローンを提供する金融機関に第二順位をつければ融資が叶う可能性があります。
ただし、金融機関によって条件は異なるものの、多くは「60%程度住宅ローンの返済が進んでいる」うえに「担保に余力がある」場合に限られます。
②他人所有物件でも大丈夫?
基本的に、審査が厳しい銀行系では本人所有でなければ融資は厳しいのが実情。しかし、ノンバンク系では他人所有物件でも融資可能とする商品が多くみられます。
所有者の同意が得られることが大前提ですが、親族や法人役員、法人名義で所有しているものや購入予定物件を担保にしたい場合には、ノンバンク系の商品を選択するのがおすすめです。
7. まとめ
今回は「不動産担保ローン」の基礎知識から選び方、活用方法までご紹介しました。
無担保ローンに比べて低金利で借り入れ期間が長く、使い道の自由度も高い不動産担保ローンは、返済管理をきちんとおこなえばいざというときの強い味方となる商品です。
まとまったお金が必要になったときには、ぜひ検討してみてくださいね。
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