「不動産売却時には確定申告をしないといけないって聞いたけど、年末調整とは別に必要なの?」
「全員が確定申告をしなければならないの?」
初めて不動産を売却する方の中に、このような疑問をお持ちの方はいませんか?
ズバリ、会社勤めで毎年年末調整をしている方であっても、不動産を売却した際には確定申告が必要です。
この記事では、不動産売却時に確定申告をするメリットや年末調整との違いについて解説します。年末調整と確定申告の違いがよくわからない、確定申告をするべき理由がわからないという方はぜひ参考にしてくださいね。
1. 確定申告と年末調整の2つの違い
会社勤めの方であれば、毎年年末調整をすることで所得税の過不足金が発生しないような仕組みになっています。そのため、基本的に会社勤めの方には確定申告は必要ありません。「これまでに確定申告をしたことがない」という方も多いはずです。
確定申告と年末調整の理解を深めるために、まずはそれぞれの違いを見ていきましょう。
◎目的の違い◎
確定申告と年末調整は目的が異なります。
確定申告は、「給与所得と不動産所得」のように複数所得のある方が、自分の所得を合計して税務署に申告し納税額を決定するものです。
一方、年末調整は、会社が従業員の給与所得を確定し源泉徴収税額を計算し直したうえで還付・徴収を行い、正しい納税額にすることです。
基本的に確定申告を行うのは個人事業主など自営業の方が多いため、会社員の方にはあまり馴染みがないですよね。しかし、不動産を売却した際には、給与所得とは違う種類の所得が発生するため年末調整では対応できず、自分で確定申告をしなければならないのです。
◎時期の違い◎
年末調整の場合、一般的に11月中旬から11月下旬に従業員の手続き関係を完了させ、12月末までに年末調整を行います。会社側は翌年の1月31日までに税務署へ書類を提出しなければならない決まりになっていますが、1ヶ月前までに完了させる会社が多いです。
一方、確定申告は、1月1日〜12月31日までに発生した所得について、翌年の2月16日〜3月15日の間に手続きをしなければなりません。
年末調整は12月末までに行う会社が多いのに対し、なぜ確定申告は2月16日〜3月15日なのでしょうか?
それは、12月31日にならないと所得が確定しないから。会社員であれば会社側が12月末に支払う給与を把握しているため手続きもスムーズにいきますが、個人事業主などの場合は大晦日まで所得が確定しないため、年明けからでなければ手続きを開始できないのです。
2. 不動産売却で確定申告は必要?
「不動産売却時には全員確定申告をしなければならないの?」「なぜ確定申告が必要なの?」と感じる方も多いでしょう。
結論から言うと、不動産売却では確定申告が必要なケースと不要なケースがあります。それぞれがどういったケースかをお伝えしますので、自分に当てはめて考えてみてくださいね。
◎確定申告が必要なケース◎
確定申告が必要なケースは「不動産売却時に購入時よりも高く売れ、利益が出た時」です。
売却した際に利益が出ることで「譲渡所得」が発生します。給与所得と合わせると2つの所得になるため、自分で確定申告をしなければなりません。
しかし、不動産の利益は単純な購入価格と売却価格の差ではないため注意しましょう。譲渡所得は下記の計算式で求められます。
・譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)
それぞれの言葉の意味は下記の通り。
・譲渡価額:売却価格
・取得費:購入価格+購入時の諸費用(仲介手数料など)
・譲渡費用:売却時の諸費用(仲介手数料など)
購入時と売却時の価格差だけではなく、諸費用なども含めて計算する必要があります。証拠として提示できる領収書などは無くさないように保管しましょう。
◎確定申告が不要なケース◎
確定申告が不要なケースは「売却時に購入時よりも価格が下がり、損失が出た時」です。
不動産売却で損失が出た際には、譲渡所得は発生せず給与所得のみとなることから、確定申告は必要ありません。不動産は土地の価格が上がらない限り値下がりするのが一般的なので、売却時には利益ではなく損失のほうが出てしまうことも多くあります。
ただし、ここで「自分には確定申告は必要ない」と考えてしまうのは要注意!
もちろん損失が出た際には確定申告の義務はありませんが、損失を申告すると節税効果が得られるというメリットがあります。国として用意している控除の特例を利用することで、譲渡損失と給与所得を損益通算できます。
つまり、不動産を売却して発生した赤字を給与所得と一緒に申告すると、所得税の還付や住民税の減額といった節税効果があるのです。
3. 不動産売却時に利用できる控除4選
不動産売却で利益が発生した際には税金を納めなければなりません。しかし、一定の要件を満たすと各種控除を利用できます。
控除を利用した際の譲渡所得の計算式は下記の通り。
・譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−各種控除
利益から控除を差し引くことで多くの節税効果を発揮できるため、ぜひ参考にしてください。不動産売却時に利用できる代表的な控除は4つです。
・3,000万円特別控除
・10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
・特定居住用財産の買換え特例
・譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
それぞれについて解説します。
①3,000万円特別控除
3,000万円特別控除とは、一定の要件を満たすマイホームを売却することで、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。
マイホームを売却して3,000万円以上の利益が出るケースは少ないため、多くの場合3,000万円特別控除を利用することで譲渡所得を0円にできるでしょう。譲渡所得が0円の場合はもちろん税金はかかりません。
3,000万円特別控除の主な要件は下記の通り。
・自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること
・住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
・売った年の前年及び前々年にこの特例を適用を受けていないこと
詳細の要件については国税庁のサイトをご確認ください。
②10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した際には、譲渡所得に対する税率が軽減されます。譲渡所得に対する税率は、所有期間によって異なります。
一般的な税率は下記の通り。
・所有期間5年以下:39.63%
・所有期間5年超え:20.315%
しかし、所有期間が10年を超えると下記の税率が適用されます。
・課税所得6,000万円以下の部分:14.21%
・課税所得6,000万円超えの部分:20.315%
仮に1,000万円の利益が出た場合、軽減税率が適用されるのとされないのとでは、納税額に60万円程の差が出ます。所有期間が10年を超えているマイホームを売却する方は必ずチェックしましょう。
詳細については国税庁のサイトをご確認ください。
③特定居住用財産の買換え特例
特定居住用財産の買換え特例とは、マイホームの買換え時に利用できる特例です。マイホームを売却して得た収入よりも購入先の物件価格が高い場合には、売却時の利益に対する税金が繰り延べされます。
通常であれば、売却時に利益が発生した際には翌年に確定申告をし、納税しなければなりません。しかし、一定の要件を満たした買換えの際には税金が繰り延べされます。
注意点は、「税金が免除される訳ではなく、あくまでも繰り延べされる」という点。購入したマイホームを将来売却する際に、繰り延べされた税金が課税される仕組みになっています。
詳細の要件などについては国税庁のサイトをご確認ください。
④譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例とは、不動産売却時に発生した損失を給与所得など他の所得と損益通算できる特例です。
不動産売却時の損失を他の所得と損益通算することで、所得税の還付や住民税の減税といった効果が得られます。なお、損失額が大きくて1年で控除しきれない部分は、翌年に繰り越して控除されます。
この特例は確定申告をしなければ適用されません。つまり、不動産売却時に損失が出た際には、義務がなくとも確定申告をした方がメリットが大きいのです。
特例の利用にあたっての要件などは国税庁のサイトをご確認ください。
4. まとめ
不動産売却時に必要な確定申告のメリットや、年末調整との違いについて解説しました。
不動産売却時に利益が出た際には譲渡所得となるため、自分で確定申告をしなければなりません。また、譲渡損失となった場合は確定申告の義務はありませんが、確定申告をすることで損益通算できるなどのメリットがあります。
不動産売却における利益の計算などには購入時の売買契約書や各種領収書などが必要となりますので、無くさずに保管しておきましょう。
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