空き家の売却には大きく分けて3つの方法があります。空き家特有のポイントを押さえて、スムーズに売却しましょう。
「相続で取得した空き家を売却したいけれど売却方法がわからない」「親と同居することになり住まなくなった空き家を売却したいけれど、何から手をつけていいかわからない」このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
馴染みのない不動産を売却するのは不安も大きいですよね。そこで本記事では、空き家を売却する方法や4つのポイントについて解説します。
1.空き家売却の3つの方法
「空き家の状態で売れるのだろうか」と考えている方も多いでしょう。空き家には大きく分けて3つの売却方法があります。
①空き家のまま売却する
②更地もしくは古屋付き土地として売却する
③不動産会社に買い取ってもらう
それぞれについて解説します。
①空き家のまま売却する
1つ目の方法は「空き家のまま売却する」です。空き家のまま売却をするメリットは下記の通り。
・売却に手間がかからない
・売却費用を抑えられる
・解体するよりも税金を抑えられる
空き家の状態で売却を開始できるため、すぐに売却活動を始められることに加え、解体費用も不要です。また、不動産は建物があることで、更地にするよりも固定資産税を抑えられます。
「空き家の状態で買う人はいるの?」と疑問に感じるかもしれませんが、最近ではリノベーションをして住む人が多く、空き家にも需要があるのです。空き家のあるエリアが若い人が多いという場合や、リノベーションして住みたいという需要がある場合は、空き家の状態で売却してもいいでしょう。
ただし、空き家のまま売却するには下記のようなデメリットもあります。
・エリアによって需要に差がある
・あまりにも古い場合は売れないリスクがある
周囲が新築ばかりの場合や高齢者が多い場合など、リノベーションして住む需要がない場合は空き家での売却は難しいでしょう。エリアの重要を見極めて売却方法を選ばなければなりません。
また、あまりにも建物が古い場合は買い手が付かないリスクも。リノベーションにも限度があるため、実際に住めるかどうかは不動産会社に相談してみるのがおすすめです。
②更地もしくは古屋付き土地として売却する
2つ目の方法は、「更地もしくは古屋付き土地として売却する」です。
古屋付き土地とは、建物は残した状態で売却するものの、売買契約自体は土地の取引となる売却方法です。更地での売却は解体費用がかかりますが、古屋付き土地の場合は解体費用がかかりません。
ただし、古屋付き土地は建物があることから土地の形状などを確認しにくいため、更地よりも買い手が見つかりにくいです。売却の際に費用を重視するか、売りやすさを重視するかを考えましょう。
更地もしくは古屋付き土地として売却するメリットは下記の通り。
・住宅以外の用途で使える
・建物の契約不適合責任が免責になる
土地としての売却であることから、買主は住宅としてだけではなく駐車場など他の用途でも土地を使用できます。そのため、より幅広い層をターゲットにできるはずです。
また、不動産取引では、引き渡し後一定期間内に建物の給排水管や雨漏りなどの不具合が発生した場合、売主の費用で直さなければならない「契約不適合責任」というルールがあります。しかし土地取引であれば、建物は責任の範囲外となるため、売主は責任を負う必要がありません。
一方、更地もしくは古屋付き土地として売却するデメリットは下記の通り。
・更地の場合は固定資産税が高くなる
不動産は更地にすることで、建物がある状態よりも固定資産税が高くなってしまいます。更地の状態で長期間売却できなければ、高い税金を納め続けなければなりません。
③不動産会社に買い取ってもらう
3つ目の方法は「不動産会社に買い取ってもらう」です。不動産会社による買取のメリットは下記の通り。
・売却までが早い
・契約不適合責任が免責になる
不動産会社による買取は、売却までのスピードが早いです。不動産のプロである不動産会社は買う買わないの判断が早いことに加え、現金で購入するケースが多く、ローン審査などの時間がかかりません。買取を依頼した後1ヶ月ほどで現金化することも可能。
また、プロとの取引になるため、売主の契約不適合責任が免責になります。建物が古くて取引後のトラブルが不安な方は、不動産会社による買取を検討することをおすすめします。
ただし、不動産会社による買取のデメリットは「市場価格よりも安くなること」です。不動産会社は事業として利益を出すために不動産を購入します。市場よりも安く購入できなければ利益は出せないため、市場価格よりも安くなってしまうのです。
2.空き家の売却にかかる費用
空き家の売却にかかる費用は下記の通りです。
①仲介手数料
②解体費用
③測量費用
④譲渡所得税
⑤印紙代
それぞれについて解説します。
①仲介手数料
仲介手数料とは、売却を依頼する仲介会社に支払う報酬のこと。仲介手数料は宅建業法で上限が設定されていますが、計算式は下記の通りです。
・売買価格×3%+6万円+消費税
3,000万円の不動産であれば、「3,000万円×3%+6万円+消費税=1,056,000円」となります。
②解体費用
更地にして売却する際には解体費用がかかります。解体費用は構造と広さによって異なるため、下記の解体費用を参考にしてください。
・木造:3〜5万円/坪
・鉄骨造:5〜7万円/坪
・RC造:6〜8万円/坪
30坪の木造建築物を解体するには90〜150万円の費用がかかります。売却する際にはかかる費用を事前に見積もり、いくら手元に残るのかを考えましょう。
③測量費用
空き家の場合は過去の測量資料がない、もしくは参考にならないという理由から、再度測量をしたうえで売却するケースが多いです。買主の購入後に「想定よりも面積が小さく、希望の建物が建てられない」というトラブルをなくすためです。
測量には数種類ありますが、道路や隣地の所有者に立ち会いを依頼する「確定測量」の費用は60〜80万円。測量費用は売主が負担しなければならないため注意が必要です。
④譲渡所得税
譲渡所得税とは、売却時に購入時よりも利益が出た場合に納める税金のこと。計算式は下記の通りです。
・譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用
取得費とは「購入価格と購入諸費用の合計」、譲渡費用とは「売却諸費用」です。購入・売却でかかった諸費用も含めたうえで、発生した譲渡所得(利益)に対して税金がかけられます。
譲渡所得税は所有期間によって税率が異なるため注意しましょう。
・短期譲渡(所有期間5年以下):39.63%
・長期譲渡(所有期間5年超え):20.315%
所有期間は1月1日時点での所有期間です。短期譲渡と長期譲渡で税率が大きく異なるため、年末に売却する場合などは特に注意してくださいね。
⑤印紙代
売買契約書には、所定の印紙を貼付しなければなりません。貼付する印紙は売買価格によって異なります。
・500万円を超えて1,000万円以下:5,000円
・1,000万円を超えて5,000万円以下:10,000円
・5,000万円を超えて1億円以下:30,000円
・1億円を超えて5億円以下:60,000円
上記金額はあくまでも軽減税率適用後の金額です。令和4年3月31日までの売買の場合には軽減税率が適用されますが、その後も軽減税率が延長されるかは不明なので注意しましょう。
3.空き家売却の4つのポイント
空き家を売却する際には4つのポイントがあります。
①名義を確認する
②高めの金額に設定する
③控除を利用する
④複数社に依頼する
それぞれについて解説します。
①名義を確認する
空き家を売却する際には不動産の名義を確認しましょう。不動産は名義人でなければ売却できません。相続した場合は、相続登記をした後で売却する流れとなります。
法務局で登記簿謄本を取得することで名義人を確認できますので、まずは不動産の名義を確認してみてください。
②高めの金額に設定する
空き家の売却は高めの金額に設定しましょう。「空き家なんて売れる訳がない」と考えてしまう方は多いですが、最初から安い価格を設定してしまうと高値売却の機会損失になりかねません。
不動産は価格交渉をして購入する方が多いため、最初のうちは相場価格よりも高い金額に設定して売却するのがおすすめです。
③控除を利用する
空き家の売却時には控除を利用しましょう。控除を利用することで、税金を抑えられたり、非課税にできたりと様々なメリットがあります。知っているか知らないかで金銭的に大きな差が出ますよ。
・居住用財産の3,000万円特別控除
・相続した空き家の3,000万円特別控除
・相続した空き家の取得費加算の特例
・10年超所有軽減税率の特例
これらの控除はあくまでも一例。控除を利用するには一定の要件を満たさなければならないため、利用できる控除があるかぜひ調べてみてください。不動産会社や税理士に相談するのもおすすめです。
④複数社に査定を依頼する
空き家を売却する際には、必ず複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。不動産の査定は会社によって差があるため、1社の査定だけでは相場価格がわかりません。複数社に依頼し、相場価格を把握しておくと安心です。
複数の会社とやり取りをするなかで、信頼できる会社・担当者を見つけて正式に依頼するのがおすすめです。
4.まとめ
空き家を売却する方法や4つのポイントについて解説しました。空き家を売却するには、空き家の特性を理解し、その空き家に合った売却方法を選ばなければなりません。誤った方法を選択してしまうと金銭的に損をしてしまうことも。
売却を失敗しないためにも、不動産会社などのプロに相談したうえで売却を進めていきましょう。
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