会社員が住宅ローン控除を受けるためには、初回だけ確定申告が必要です。一方で、個人事業主は毎年確定申告が必要。その中で、「住宅ローン控除を受けることが可能なのか?」という不安を持っている個人事業主も多いようです。
そこで今回は、
・個人事業主でも住宅ローン控除は受けられるの?
・自宅を一部事務所にするけど、住宅ローン控除は大丈夫?
といった疑問や不安がある方のために、住宅ローン控除を使うための条件や注意点などを詳しく解説します。ぜひ最後までチェックしてみてください。
1.自宅兼事務所は経費計算できる!
自宅を事務所として利用している個人事業主も多いでしょう。その場合、「事務所として使っている部分」を経費に計上することができます。
ここでは、賃貸住宅の場合と持ち家の場合、それぞれの経費の計算方法を解説します。
ケース①:賃貸住宅
賃貸住宅は、支払っている家賃に対して「部屋全体の床面積」と「事務所として使用しているスペースの床面積」を案分して経費計上を行います。
たとえば、経費として計上できるのは以下の費用です。
【賃貸アパート(家賃月額8万円)・水道光熱費月額1万円・事業割合20%】の場合
・地代家賃=8万円×20%×12カ月=19万2,000円(年間)
・水道光熱費=1万円×20%×12カ月=2万4,000円(年間)
そのほか、固定資産税や火災保険料も同じ計算方法です。
ケース②:持ち家
本来、自宅と事務所が別であれば「事務所」は経費計上できますが、住宅ローン控除対象外となります。
一方、住宅と事務所を併用している場合は、居住部分が2分の1以上あれば、事務所部分も含めて経費計上することが可能。さらに、事務所部分も含めて住宅ローン控除の対象となります。
自宅の一部を事務所として使う場合は、減価償却費に事務所で使用した割合をかけた金額が経費となります。
・平成19年3月31日以前に取得した場合:
旧定額法が適用され、「取得価額×90%×旧定額法の償却率」が減価償却費となる
・平成19年4月1日以後に取得した場合:
定額法が適用され、「取得価額×定額法の償却率」が減価償却費となる
例として、【3,000万円・新築・木造建物・事業割合40%】という条件で家を建てるケースに当てはめて計算してみましょう。
減価償却費=3,000万円×償却率0.046×40%=55万2,000円
つまり、55万2,000円が控除の対象となります。
ちなみに、光熱費などは賃貸住宅の例と同様の計算方法です。また、住宅ローンの利息も経費に計上できます。
参照:償却資産の償却率一覧
http://tool.yurikago.net/644/yurikago/2012shokyakuritsu.html
2.個人事業主が住宅ローン控除を受けられる条件
個人事業主の方が住宅ローン控除を受けるためには、いくつかの条件があります。
①居住期間
購入してから6ヵ月以内に入居を始めていて、なおかつ、その年の12月31日まで住み続けていることが必要です。例えば、6月1日に家を購入して9月1日に入居を開始しても、12月20日で引っ越した場合は住宅ローン控除が受けられません。
②所得額
1年分の合計所得金額が2,000万円以下であることも条件です。なお、会社員の方で副業として事業所得がある場合も、合計2,000万円を超えると適用外になるので気をつけましょう。
③住宅の床面積
控除を受けるためには、購入住居の床面積が50㎡以上あり、その2分の1以上の部分を居住用として利用する必要があります。
つまり、事務所部分の割合を50%以上で設定すると、住宅ローン控除を受けられなくなってしまいます。「床面積」を意識した設定を心がけましょう。
④10年以上のローン期間
住宅ローン控除の適用要件として、ローンの返済期間が「10年以上」であることも必要です。特に個人事業主の方は、売上が好調な年度に住宅ローンの繰上返済を検討する方もいらっしゃるかもしれません。
ここで気をつけたいのが、繰上返済を行うことで住宅ローンの返済期間が「10年未満」になってしまう恐れがあるという点。住宅ローン期間が10年未満になると、控除が受けられなくなってしまいます。
繰上返済を行う場合は、控除を受けられる期間が終了した「返済11年目」から行うことをおすすめします。
個人事業主が住宅ローン控除を受ける条件とは?不動産会社のハウスウェルにご相談を!お問い合わせはこちら
3.住宅ローン控除に必要な書類
住宅ローン控除を受けるための書類を準備しましょう。ここでは、住宅ローン控除申請に必要な書類を紹介していきます。
①住宅借入金等特別控除額の計算明細書
税務署に備え付けてある「控除できる額などを計算するための書類」のことです。国税庁のホームページからもダウンロードできるので、チェックしてみてください。
②住宅ローン残高証明書
年末時点でのローン残高が記載してある書類のこと。毎年の控除額を、ローン残高を元に計算するためのものです。借入先の金融機関より毎年11月頃に送られてきます。
③住宅の登記簿
土地や建物の所有者情報などが記載されている書類で、本人以外でも法務局で取得できます。誰でも取得できるものなので、「なかなか取りに行けない……」という方は、家を購入した住宅メーカーや不動産会社にお願いしてみましょう。
④住宅の契約書関係
家を購入したときの不動産売買契約書や建物請負契約書です。失くしてしまった方は、購入した不動産会社や住宅メーカーに相談してみてください。控えを保管しているかもしれません。
⑤マイナンバーカード
マイナンバーカードを作っていない方は、「マイナンバー通知カード」あるいは「マイナンバー記載の住民票の写し+運転免許証等の本人確認書類」でも大丈夫です。
また、入居時期や正式な住所を記載するときのために、住民票を用意しておくことをおすすめします。
4.住宅ローン控除を受ける際の注意点
事務所兼住宅を使用している個人事業主の方は多いでしょう。個人事業主が住宅ローン控除を受けるためには、いくつかの注意点があります。
①控除対象外になるケースも
事務所として使用している割合が全体の50%を超えると、住宅ローン控除の対象から外れてしまいます。住宅ローン控除の利用を考えている場合には、「事務所部分の広さ」について事前に考慮しておきましょう。
②共有名義の場合は持分計算を行う?
控除できるかできないかを考える際に間違いやすいのが、「共有名義」の場合の住宅ローン控除です。共有名義の場合は、共有割合で床面積を案分して判断されるわけではなく、全体の床面積で共有者ごとの判定を行います。
つまり、床面積が50㎡以上あれば、共有名義人それぞれが住宅ローン控除の対象となる家を所有していることになります。「共有名義だからといって、自分の持ち分だけを考えるわけではない」と覚えておきましょう。
③事務所部分は「3,000万円控除」が使えない
自宅を売却する際、「事業用部分と居住用部分の割合」が大切なポイントとして関わってきます。
自宅を売却した際に「もうけ」が出る場合、「居住用財産の3,000万円控除」の特例を利用することが可能。しかし、「居住用財産の3,000万円控除」の特例は、居住用部分しか利用できないのです。
例えば、自宅売却時の「もうけ」が1,000万円の場合、事業用部分の割合が20%であれば、200万円のもうけ部分については特例を受けることができません。
ただし、居住用部分の割合が全体の90%以上なら、全体を居住用に使っていたものとみなして「居住用財産の3,000万円控除」の特例を受けることができます。
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5.まとめ
会社員の場合、住宅ローン控除に関する確定申告は2年目以降は勤め先が行ってくれます。しかし個人事業主は、毎年の確定申告や帳簿付け、会計管理まですべて自分で行う必要があります。
これからマイホーム購入を検討している個人事業主の方も多いかもしれません。会社員はいくら家で仕事をしても、家で使った光熱費を経費で落としてはもらえませんよね。一方個人事業主は、家に仕事場を設けている場合、光熱費や住宅ローンを案分して経費にすることが可能です。
個人事業主の方は、経費をうまく使いながら節税につなげていきましょうね。節税や住宅ローンについては、不動産専門家のハウスウェルにご相談ください!税理士とも提携しているため、一つの窓口として相談をお受けできますよ。
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