不動産を売る方法の一つに、親族間売買があります。親族間売買は相続対策や仲介手数料の節約などメリットも多いですが、思わぬトラブルの発端となってしまうこともあるため注意が必要です。
この記事では、不動産の親族間売買とはそもそもどのようなものなのか詳しくお伝えします。注意点や税金についてもわかりやすく解説しているので、親族間売買が気になっている方はぜひ参考にしてください。
1.親族間売買とは
親族間売買とは、家族間で契約を交わし不動産を売買することです。例えば、「親から子へ不動産を譲る」「子から親へ不動産を譲る」「兄弟間で不動産を譲る」などのケースが挙げられます。
親族間売買には、他人と売買契約を結ぶよりもお互いにとって都合の良い条件をつけやすいメリットがあります。一方で、税金の取り扱いにはより一層注意が必要です。親族間売買を行うにあたっては、しっかりとメリット・デメリットを知っておきましょう。
なお、親族間売買であっても流れは一般的な不動産売却と変わりません。必ず売買契約を結び、金銭の授受をもって登記の変更を行います。
①親族間売買における「親族」の範囲
親族間売買で気になるのが、親族の範囲です。民法では「親族」というと6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族とされていますが、親族間売買においては税務上明確に定義されているわけではありません。
それよりも親族間売買で税務署が特に気にしているのは、相続税や贈与税を逃れることを目的とした売買に該当しないかという点です。このことから、「相続人」に該当する親族が、親族間売買における親族の範囲と考えるのが自然といえるでしょう。
②親族間売買のメリット
親族間売買を行うメリットは、主に金銭的な負担を軽減できることにあります。親族間売買を行う際は、メリットとデメリットを十分に理解したうえで契約するか判断するようにしましょう。
まずは、親族間売買のメリットから確認をしていきます。親族間売買のメリットととして挙げられるのは、以下の3つです。
・仲介手数料を用意しなくてよい
・取引条件に融通を利かせやすい
・相続対策ができる |
③仲介手数料を用意しなくてよい
親族ではなく他人と取引をする際は、不動産会社へ仲介手数料を支払い、間に入ってもらうことでスムーズにやり取りが進むメリットがあります。
一方で、親族間売買は基本的に当事者同士によるトラブルの心配が不要なことから、不動産会社を介する必要もなく仲介手数料がかかりません。不動産売買にかかわる費用をできる限り抑えて取引ができるのは、親族間売買ならではのメリットといえます。
④取引条件に融通を利かせやすい
不動産売買を他人と行う場合は、連絡や鍵の引き渡し、引越しのタイミングなどについてある程度相手方を気遣う必要があります。加えて、不動産の価格には相場があるため、売る場合・買う場合どちらであっても相場を意識しなければなりません。
親族間売買であれば、相場よりも売却価格を安く設定したり、引き渡しの条件に融通を利かせたりしやすくなります。また、住宅ローンを利用せずに分割払いで支払うことも可能です。
ただし、親族間売買で分割払いを利用する場合は「みなし贈与」と疑われないよう、利息を決定したうえで契約書を取り交わしましょう。
⑤相続対策ができる
親族が亡くなってから遺産を相続する際、よく起こるのが遺産の相続人をめぐるトラブルです。たとえ遺言があったとしても大きなお金にかかわるものですから、当人がいないなかでやり取りをすると、どうしても納得のいかない人が出てくることがあります。
親族が生存しているときに適正な価格で親族間売買を行えば、このようなトラブルは起こりにくくなるでしょう。遺産相続をめぐるトラブルが心配だという方は、一度親族間売買について話し合ってみるのも良いかもしれませんね。
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2.親族間売買の注意点
次に、親族間売買におけるデメリット、注意点をあわせてお伝えします。
・低価格の譲渡で「みなし贈与」が疑われやすい
・税金の特例が適用されないケースがある
・住宅ローンの審査で厳しく見られやすい |
親族間売買で特に気をつけたいのは、上記の3つです。
①低価格の譲渡で「みなし贈与」が疑われやすい
親族間売買で最も注意したいのが、「みなし贈与」です。みなし贈与は通常の贈与とは異なり、「破格で譲る」など相手に利益を与える行為が該当します。
適正価格の範囲内で相場よりも安く売却することは問題ありませんが、相場からあまりにも逸れた低価格で譲ると、その差額に対して高額な贈与税が課されてしまうため注意が必要です。
②税金の特例が適用されないケースがある
・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例
・被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例
・マイホームを売ったときの軽減税率の特例 など |
あくまでも一例ですが、親子や夫婦などが不動産の親族間売買を行うことによって、上記のような税制の優遇を受けられる特例が対象外となることがあります。
③住宅ローンの審査で厳しく見られやすい
親族間売買で発生した支払い費用を、住宅ローンを使って支払おうと考える方も多いでしょう。しかし、個人間での売買では売主と買主が共謀した住宅ローンの不正利用などが警戒されるため、融資時の審査がかなり厳しくなります。また、親族間売買での融資自体を受け付けていない金融機関も少なくありません。
親族間売買の契約を結んでしまう前に、一度信頼できる不動産会社に相談をしてみることをおすすめします。ハウスウェルでは不動産のプロや弁護士をそろえ、あなたにとってベストな選択肢をご提案します。
3.親族間売買の適正価格とは?
親族間売買でみなし贈与とみなされないようにするには、不動産に対してしっかりと適正価格を設定することが大切です。
・不動産会社で物件を査定してもらう
・路線価を使う、もしくは路線価を1.25倍にする
・不動産鑑定士に鑑定してもらう |
適正価格を決める手段としては、上記のような方法があります。特に不動産会社では通常の不動産売却価格を知ることができるため、「安すぎる売値」を避けるのに役立つでしょう。
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4.親族間売買を行う流れ
1.法務局で登記簿謄本を取得し、不動産の所有者や権利関係を把握する
2.必要に応じてローンの完済や抵当権の抹消、名義変更手続きなどを済ませる
3.不動産価格を調査し、適正価格で売却額を設定する
4.代金の支払い方法や引き渡し日などの条件の摺り合わせを行う
5.契約手続き・決済・引き渡しを行う |
親族間売買の流れに、通常の不動産売買と大きく変わるところはありません。しかし、親族間売買では不動産会社を介さずに契約を進めるため、少々時間と手間がかかることもあるでしょう。
①親族間売買で課税される税金
親族間売買によってかかる税金は、下記のとおりです。
印紙税 |
・不動産売買契約書の取り交わしに必要
・費用は売主と買主で折半する |
登録免許税 |
・不動産名義の変更、抵当権の抹消や設定の登記時に必要
名義変更:所有権移転登記
抵当権の設定:抵当権設定登記
抵当権の抹消:抵当権抹消登記 |
不動産の譲渡所得税 |
・売主が不動産売却によって利益を得た場合に課税される |
不動産取得税 |
・買主が不動産を取得した場合に課税される |
名義変更や抵当権の抹消・設定の有無によって、課税される税金は変わります。また、売主の場合は譲渡所得税が、買主の場合は不動産取得税が課されることも覚えておきましょう。
5.まとめ
親族間売買には、取引条件の融通を利かせやすいことや、通常の相場よりも安い価格で売買できることなど金銭的なメリットがあります。一方で、住宅ローンの融資が受けにくかったり、「みなし贈与」と判断されやすく贈与税が課されてしまうケースがあったりと大きなデメリットが存在するのも事実です。
不動産の売買でお悩みの方は、一度不動産のプロに相談されることをおすすめします。ハウスウェルでは適正価格の調査はもちろんのこと、不動産売却についてベストな選択肢のご提案が可能です!
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